..前にならえ、ではなく、前をつかめです。しかし、インターネットの誕生は、情報のスピード、量、質、すべてのスケールを変え、国境を越えた経済、人的交流を大きく加速させた。だが、それと同時に、人種、文化、宗教の違いによる問題や貧富の差など、理想的な未来を描くことが難しくなりつつあることも事実であって、技術革新のスピードを手放しで喜べない側面もある。それでも、かつて自分が海外で残したレース活動の軌跡は、情報として世界中に広がり、異国との取引において信頼の基盤となることも少なくない。広報活動をすることなく世界中に顧客が増え、企業との提携が増える一方にあることに、いろいろな意味で世界がコンパクトになったことを実感する。先日もヨーロッパにある生産拠点や提携企業を訪問したが、理由は直接会って話をすることが大切だと思うからだ。ネットツールでは築けない人間関係があり、とくに、今回は新たに提携を開始することとなったプロメテオ社では、仕事を越えて、いろいろと楽しい時間を過ごすことができた。 プロメテオが開発した車両、隣にいる社長の自信作。プロメテオ社は、主力商品としてアルファロメオやアバルトのLSDとオイルクーリングパーツを作っているが、私が最も興味をもったのは、自動車部品ではなく、パワーボートのハイブリットシステム用クラッチであった。というのも、水上を走るボートは、基本的に一定速度で走るのでジェネレーターとしての回生は得られない。それだけに、メリットを享受するためには、かなり高効率なモーターとバッテリー、場合によっては発電専用の小型エンジンが必要となるからだ。それでも、物づくりに対する拘りがあるのであろう、単なるクラッチとしての機能を越えてハイブリッドシステムに貢献できる可能性を探っているようだ。ヨーロッパ特有の長い夏休みを前にして、早くもプロメテオから部品が届いた。この中でとくに期待しているのは、コーナリング中のインリフトが大きい4Cの不安定な走りに決定的な改善策となるLSDだ。とくにウエットコンディションでの効果は覿面、サーキット走行でもトラクション不足にストレスを感じているユーサーにとっては待ちに待った機能部品である。 4Cのエンジンルーム、モノコックレイアウトを検証させてもらった。早速、ファクトリーで車両にLSDを装着してみたが、お世辞にも整備性が良いとはいえない4Cの場合、エンジンの脱着が必要となる。また、セミオートマチックミッションの分解が必要となるため、時間を要する作業となった。さらに、デフ交換は思い掛けない問題がハウジングに発見され、対策に迫られることになった。すぐに、プロメテオ社のエンジニアと対策を協議したが、彼らにとっても想定外の問題であったため、オレカファクトリーで修正加工を施し、製品の改良へフィードバックすることになった。※現在販売中の製品は、今回のフィードバックをもとに、イタリア本国の工場で改良が施されておりますので、ご安心下さい。 LSDの問題は解決、素晴らしい日伊のチームワーク。いい感じだ。LSDを装着した4Cの走りは、まったく別世界。その変化は路面の荒れている首都高速を走っただけで分かるほど高速安定性に大きく貢献しており、アクセルワークで自由自在にスライドをコントロールできるようになるので、走りが楽しくなることは間違いないが、それよりも高速走行での安心感が大きく向上することは最大の魅力といえよう。また、インリフトの抑制は、ギアボックスの温度を下げることにも貢献するので、プロメテオからも要望を受けていることもあり、一度機会をつくってサーキットで試してみたいと思う。カーボン製品の工場周辺は歴史ある田舎町、犬の親子ものんびり。届いた製品の中にあって、もう一つ気に入ったのがアバルト&アルファロメオ用の大容量オイルパンだ。メンテナンスをしていて気にはないっていたが、ハイパワーな1400CCターボエンジンとしては、オイルパンの容量が少なく、形状もよくないので、スポーツ走行での油圧低下、油温上昇の要因となっていることは分かっていた。それだけに、油量を約80%増量し4.75リッターとし、オイルの片寄りを防ぐ特別なバッフルプレートを持つだけに、スポーツ走行はもちろん、日常的にもエンジンの保護に大きく貢献することは間違いないからだ。 ミシュランレストランでランチミーティング。仕事、仕事。私共の製品も、ヨーロッパへ輸出を始めているが、良いものを選び輸入することによって知識を高め、目を養うことは、自社製品の品質向上にも役立つことと思う。さて、次は何処へ出張だったかな。
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