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柔能く剛を制す
2008.08.10

最近よくある、オレカブランドに関する質問の中でタワーバーについての問い合わせが急増している。理由はこれまで剛性重視のカーボン製、そして重量にも拘ったチタン製の2種類をリリースしてきたのだが、今年4月に新たにフレームサスペンションという第三のタワーバーを発表したからだ。

そもそもタワーバーを取り付ける目的とは、ボディ剛性の向上を意図としており、効果を簡単にいうと、シャーシーの捻じれを抑えることによって、スカットルシェイクを制御し、またサスペンションの支点のブレを止めることによってダンパーの能力を100%導きだすことに近づけるため。そして、最も重要なのは、タイヤの接地性に対して悪影響となるジオメトリー変化を減少させることだ。

ボディ剛性の重要性については、カテゴリーが正反対となるメルセデスのSクラスとGT−Rを例に取ると分かりやすい。というのも、乗り心地を重要視する高級セダンもスピード重視の超スポーツモデルも共に剛性に拘る、何故ならばシャーシー性能には、共通するメリットがあるからだ。

うちでは、他にもボディ補強の部品を数多くリリースしている。それだけに、開発する際の重要なポイントは幾つもあるのだが、まず注意するのは補強する場所だ。例えば、貧弱なパネル面に支点を取っても大きな効果が期待できないばかりか、逆にボディを歪めてしまうケースもある。要はヒンジ、バルクヘッド、ストラットヘッドなど、自動車メーカーがセオリーとして強固に造り込むエリアをポイントに狙うということだ。また、タワーバーの素材、強度、重量、そして取り付け方法についても接面積を検討するなど多義に渡るわけだが、開発過程を見ることのできないユーザーとしては、製品選びは難しいことだろうと思う。そう、唯一出来る簡単なチェックは、取り付け面の強度の確認。タワーバーを車体へ取り付け、体重をかけ強く揺さぶってみることぐらいか。少しでもバーが撓んだり、支点がぐらつくようなら問題外ということになる。

ただ、ボディ剛性を上げるには、重量増やコストといった点から限界があるのも事実。そこで新しい発想となる第三のタワーバー、フレームサスペンションの登場となったわけだ。まず、下の写真を見比べてほしい。この部分は、タワーバー両端にあるブラケット取り付け部だが、普通のタワーバーに対してフレームサスペンションの方が倍以上大きいことが分かる。実はここに秘密があり、振動を吸収する部品を組み込んであるのだ。では何故?それは、サスペンションに置き換えて考えると分かりやすい。

サスペンション下のタイヤは路面の凹凸を上下運動をすることによって、衝撃は吸収される。この際、スプリングが大きな過重変化を受け止めるわけだが、スプリング自体には上下運動を収束させる能力が欠如している為、単体ではピッチングが止まらなくなってしまう。そこで、ダンパーが上下動をスムーズに収束させて元の位置へ戻すことになる。ゆえにサスペンションのセッティングによって乗り心地が大きく左右されることとなるわけだ。

さらに、サスペンションで吸収できなかった振動や、大きな応力によって発生するフレームの捻じれも乗り心地に対して大きな影響を与えるわけだが、シャーシーには、この運動エネルギーを収束させるダンパーはついていない為、結果として不快な振動がフロアーを通じてキャンビン、ステアリングへと伝わって来てしまう。これが、俗にいうボディが緩い、剛性感がないといったフィーリングの要因なのだ。

そこで、ダンパー効果のあるタワーバー(フレームサスペンション)を取り付けることによって、この不快な振動を積極的に吸収しようというのが開発の原点。また、商品化の過程で重要視したのは、やはり剛性だ。理由は、剛性不足の素材、設計をとった場合、ここで2次振動が発生し振動を増幅させてしまうケースもあり得るので注意が必要なのだ。つまり、鉄、カーボン、アルミといった構成部品には硬い、柔らかいはあっても振動を抑える方向に作用することは期待できないからだ。なので、フレームサスペンションは、標準仕様のタワーバーと比較すると剛性はやや低い値となるが、それでも補強としての効果は十分に発揮するのである。

何よりも、粘るようにしっとりとしたハンドリング。そして、しなやかな乗り心地と静粛性の両立を求めるアルファユーザーには是非お勧めしたい機能部品が出来たと思っております。

部品開発は面白い!!デザインも楽しいし、開発の過程でテスト走行を繰り返す中で、意図どおりに機能してくれた場合はとくに気分がいいものだ。さて、次は何を作ろうかな…..

framesus

しなやかな走りの秘密、ここにあり!