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わずか100馬力の115スパイダーが、500馬力のGT3RSより楽しい理由
2016.12.17

 すでに10年以上、目を引くスポーツカー(ニューモデル)に出会ったことはなかった。だが最近、久々に気になるスポーツカーが目に留まった。それは、かつてストイックに走りをだけを追求していただけのシンプルなポルシェを思い起こさせる911Rというモデル。そのコンセプトは、RRレイアウト911だけに存在する孤高の世界、特別な運動性を追求すること。ラグジュアリー路線に舵を切り、巷では有閑マダムの御用達SUVばかりが目立つ最近のポルシェにしては非常に興味深い。

 8500rpmまで回るフラット6エンジン、そしてマグネシウムやカーボンによって計量化された高剛性のボディワークは、サーキット専用モデルとなるGT3RSをベースとしているものの、あえて6速マニュアルミッションを搭載。さらには、GT3RSより、さらに50kg軽量化するために、遮音材までも取っ払い極限まで減量、その車体重量は1370kgに抑えられているという。
 それでも現行の997ボディが大柄なことに変わりはないが、911Rには開発エンジニアの秘策として、ライトウエイトスポーツだったころの911らしい俊敏性を与える為に、7kgの重量増にも目を瞑り、あえてポルシェの先進技術の粋とさせるアクティブステアリングシステムを採用。猫も杓子も注目するニュルブルクリンクのラップタイムに軸足を置くスーパースポーツが多いが、911Rがあくまでもドライバーズカーに徹している証だ。
 個人的には、ストリートユースでサーキットスペシャに乗りたくない。それ故にノスタルジックな911Rに牽かれたのだが、残念ながら販売開始早々完売。その理由は、900台余りの限定モデルということが、投機対象となってしまったこと。それでも、911Rの発表は、昔を知るポルシェユーザーの心を鷲掴みしたことは間違いなく、普通に買うことが出来るGT3RSに乗ってみると、その価値がよく分かる。

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 先日、最新モデルのGT3RSがメンテナンスのために入庫したので、様々な観点から考察。結論としては 先進のメカニズムによるパッケージは非常に完成度が高く、サーキットでのパフォーマンスにおいて各方面から高評価を博していることが頷ける。
 しかしながら、ファクトリーから数百メートル走らせての第一印象を端的にいえば、大型のゴルフカートに乗っている感じで、ストリートでは面白くも可笑しくもない。また、チューンされたフラット6エンジンは、アイドリングから常用回転までウルトラスムーズに回るが、6000rpm以下では特別な躍動感はなく、今流行のツインクラッチによるセミオートPDKの動作も、ストリートでは緩慢なリアクションを示すことも多く、フラストレーションを覚えることも多々ある。

 もちろん、フルスロットルで加速させれば、それなりのGを感じるし、パドルシフトを駆使しながらハイスピードでコーナリングをすれば高い潜在能力を瞬間的に垣間見ることは出来る。が、すこぶる高い安定性が齎す正確なコンタクトフィールは面白みに欠けるし、限界を超えた時の挙動もコントローラブルなので、ドライバーは仕事をするかのように、冷静にタイムを削り取る作業を行える。少し危ういくらいが楽しいと思う自分としては、良くも悪くもラップタイム競うサーキットスペシャルに開発されたマシンゆえのジレンマを感じる。まあ、フィールドをフォーカスしているクルマだから仕方ないのだが…

 

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 魅力的なスポーツカーに共通していること。それは、動力性能もさることながら、近所の小道を時速40km/hで走らせていても楽しめる、五感に伝わってくる特別な味わいがあるもの。それは、手応え、音、振動、視覚、匂いといった感覚を揺さぶり、満足感へと誘う導線となる。だが、最新のメカニズムを導入し、ライバルメーカーと常にサーキット最速を争うGT3RSのストリートにおける走りとは、無機質で存在感が希薄だ。これと対極にあるスポーツカーと感じたのは、同じ時期に入庫していた古いアルファロメオのスパイダーであった。


 小柄でスタイル抜群、イタリアンスポーツならではの線の美しさがあり、ソレックスのツインキャブを装備するクラシックなツインカムエンジンは、コールドスタートの度に気を使いながら、火を入れると音だけは勇ましく吼えるものの、動力性能は現代の軽スポーツモデルにも負けそうなレベル。さらに、Hパターンの5速マニュアルミッションの頼りないシフトレバーを操り、およそスポーツカーのスタンダードからは程遠いグニャグニャのサスに乗せられ走り始めれば、毎回あちらこちらから起こる不穏な動作状況の確認に迫られることに…それでも100km/hも出せばスピード感満点に躍動感溢れる走りは、数字では図れない大いなる魅力であり、ガレージを後にして5分 もすれば、日々スパイダーへの愛着がより増すことだろうと思えた。


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 しかし、自動車の機械的な進歩は、この30年で飛躍的に進んだことを示す2台であり、30年前にこの大きな差が生じることを予測し得た物はいない。競争の原理は、時の技術革新を加速させる。ゆえにGT3RSの姿は究極の正常進化であり、後の30年後のスポーツカーがどうなっているかを考えると、非常に夢のある現実といえる。


 現状維持は後退するということ。


 アメリカの著名な企業の創業者の言葉だが、自分としても、ライバルをリード出来ているかどうかはともかく、仕事を進める上で常に意識している指針。昨日まで当たり前に使っていた物が新製品に取って代わり、それとともに消滅していった企業をいくつも目の当たりにしていることもあるが、社会、市場、技術革新の変化のスピードに対応出来なければ、企業の存続は不可能であることは日々痛感している。

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 憂うべきは、この格言が日本の国政問題そのものであることだ。長年、島国に暮す日本人は、日々混迷を深めていく国際社会の現状に疎くなりがちだが、科学、技術革新以上に変化する世界の政治経済は、主導者が国のあるべき未来を見据え、進むべき道を苦渋の決断の連続によって歩み続けている。だが、使いたい放題の公費を生業にする日本の政治屋に、進むべき道を切り開く力はなく、分かっていても選択するわけがない。

 自動車の進化とは真逆に、70年以上、日本の国家行政は必要な進化を何一つ成し遂げてはいない。この現状を、かつて没落の象徴として経済が低迷した80年代の英国に重ねてしまうのは自分だけではないだろう。
 80年代、ユーロへの加盟も頓挫した英国は、サッチャー政権の誕生によって、国民と共に身を切る財政再建を断行した結果、財政破綻を免れ、EUを再び牽引するまでに復権した。
 それでもなお、政治に参加し成果を得た経験を持つ英国民は、国際情勢の変化、格差是正に向け、世界の予想を再び覆し苦難を承知でEUを離脱する英断を国民投票によって示して見せた。
 今の日本が変革を恐れるばかりに、世界から遅れをとり始めている事とは対照的な出来事である。それでもの光明はある。都知事選で税金の使い道が間違 っていることを提唱し、自ら給与を半減することを公約に当選した小池氏の動性に注目が集まったことだ。

 敗戦国となった日本は、余りにも多くを失い過ぎた。復興の要となった行政機関は、占領軍を指揮する米国の都合に即して俄仕立てされたもので、構造的欠陥が指摘されつつも、貧困脱却を御旗に、玉石混淆、高度経済成長の波に乗りこれまでは何とか機能してきた。
 しかし、社会が成熟し、斜陽を向かえた今、国力低下の主因となっており、財政的にも抜本的な改革が求められている。だが、官僚天国と揶揄される日本では、そもそも、罪に値する罰を受けないから、幾度も間違いを繰り返しても、平然と職を続ける。これほど危機感、責任感がない者に役割を果たせるわけがなく、我欲に塗れた役人自ら天国を捨てることなど永遠にない。
 もはや国家、国民のために、身命を賭して、戦う、賢く強い政治的主導者が誕生し、何もなかった敗戦直後のようにリセット、すべて作り変えない限り革新することは無いだろう。そのためには、情けないほど低次元にある国会議員の質を高めることが急務だ。選挙制度を改め、資格試験を設けることも必要かもしれない。
 そして、社会問題となっては立ち消えるが、何の役にも立たない旧態依然とした地方議会制度は廃止し、他国では一般的な、地元の創世を目的に、土地に暮らす公正な識者による無給の議会制度を創設すべきだが、改革されてはお飯の食い上げと、徒党を組んで抵抗する頭の黒い鼠が沢山いるらしく、一向に進まないことも忌々しい問題である。

 米国では、ろくな仕事もせずに高額な給与を掠める政治家、さらには不正行為を繰り返す政党政治からの離脱の御旗として立候補した、バラエティー番組で人気の経営者が、最悪の選択と称された選挙の末に僅差で大統領に選ばれた。同じような現象は、世界中で起こっており、生活の先行き不安を招いた政治への不信が、短絡的なポピュリズムの台頭を加速させ、未来はより不透明かつ予測不能なものとなりつつある。

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 最近のニュースに、近代の南極の探査活動を主導してきたオーストラリアが、新たに乗り込んできた新参者の急激な増長に危機感を募らせているとの報道があった。日本も南極探査では、一歩先に踏み込んだ国の一つだが、今では影も薄く、ここでも物量にものをいわせて拠点を拡大させているのは中国、そしてロシアだ。主な目的は、日本の気象、環境観測とは異なり、埋蔵されている資源の独占的な開発。先人が打ち立てた協定など見向きもせず、虎視眈々豪腕で事を進めている。

 日本は財政破綻、もしくは他国からの侵略を受けるまで、目を覚ませないかもしれない。国を守り、民の生活を豊かにする為に命を賭し、礎となった靖国に眠る英霊は、日本の現状をどう思うことであろうか。