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ドライビングテクニックは奥深いのです
2007.09.30

今年もアルファロメオドライビングレッスンは事故もなく無事終了致しました。ご参加頂きました皆様雨の中ありがとうございました。自分としては、サーキットをアクセル全開で気持ちよく走ってほしくもあり、トップクラスのプロドライバーの同乗走行を体験してもらい、最新のドラテクを磨きながらも安全第一でなくてはいけないと常に考えています。そして、環境に配慮したドライビングテクニックを競うECOレースの開催も夢だったし、今年はパスタランチetcと夏休みのイベントとして集まって頂いたアルファユーザーが一日楽しめるようにと、精一杯盛り沢山のプログラムを企画、準備しました。でも収支は????本音を言えば運営には毎年苦労の連続なのです。とはいえ、終了後「楽しかったです」と参加者の方から声を掛けられる度に、開催してよかったなぁ、と今回も心から思った次第です。
当日は、レース界でもトップクラスのドライバーたる黒澤選手、中川選手といった講師が、危険回避等を中心に日常に役立つポイントをレクチャー。また、個別にはサーキット走行の秘伝や、チューニング指南にいたるまで、一日タップリとゆとりを持って時間を用意できたこともあり、参加者の皆さんは、単にサーキット走行を繰り返すよりも遙に有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。とくに、毎回好評のプロドライバーがマイアルファを受講生同乗でドライブする体験は、自分自身の運転で同じサーキットを走り、そのテクニックの差を比較することは、1000の言葉より説得力のある講習となったはずです。それは、プロの限界走行を体感することによってのみ感じ取ることができるクルマの挙動がスタートポイント「このスピードまでは自分のクルマは安全な姿勢を保つことが出来るが、これ以上は危険なのだな」となるからです。この体験は、高度なドラテクを会得する場合、本来自分自身でリスクを負いながら試行錯誤し、長い時間をかけて見極める線引きなのですが、これを短時間にノーリスクで体験することからレッスンを始めることによって、初心者でも、安全かつ一機にテクニックが上達する重要な要素となるからなのです。

クルマを如何なる状況においても正確にコントロールするには、精神的余裕が必要ですが、プロは限界走行をしながらも、その操作を意外なほどゆっくりとしているものです。自分自身でコース上に設定されたカリキュラムを同じ様にこなしていくことによって、自然に体験できるようにプログラムしているからこそ一日が終わってみると驚くほどスムーズにマシンコントロールできるようになる秘訣といえるでしょう。

とはいえ、一日でトッププロと同じテクニックを習得できるほど、レーシングドライブが簡単ではないことは事実です。例えば、シューマッハと低速レイアウトの富士のショートサーキットをよく走っている自称レーサーが、わずか300馬力足らずのマイアルファロメオでタイム競争したとしましょう。シューマッハは、2周で自称レーサー所有のアルファロメオで同タイムをマークしますが、その差は大きくないはずです。そこで、自称レーサーはシューマッハと同じタイムだと喜ぶことでしょう。ところが、これが逆に1000馬力に迫る究極のスピードを誇るF1マシンで、高速サーキットの鈴鹿で争ったとしましょう。自称レーサーは一ヶ月走っても、その差は1分・・・・いや、まったくお話にならないし、クラッシュする可能性は大。ようは基本テクニックなくとも限界が低い条件下では、慣れがあれば条件反射で誰でもそこそこのタイムは出てしまうということです。技術のポイントは、瞬時によるマシン限界の正確かつ高い把握能力とコントロール。いかにマシンに負荷を掛けず、まるで時計のように同一タイムで周回できるか、目を瞑っているがごとく平常心でコントロールできるのか。タイムは、その先にある一つの基準でしかないのです。

若い頃、F3そしてルマンでシューマッハとレースで戦い、チームメイトだったフィレンツエェンの記憶は今も鮮明で脳裏から離れない。彼らは数少ないインパクトのあるドライバーだし、結果としてF1へ辿り着いている。今思うとステップアップを繰り返す度に、レベルの高いライバル達に思い知らされたものだ「世界は広い、そしてドライビングテクニックとは本当に奥深いものだ」と。

firenthen

1991年 チームメイトのH.H.フィレンツェンとルマンサルテサーキットにて